平成2年卒、医局を後にして埼玉県の北の端、羽生総合病院へ赴任したのは平成16年の10月、外科医生活15年目の秋でありました。そこは周辺に大きな病院がない医療過疎地域であり、消化管は元よりあまり一般の市中病院では行わない肝臓や膵臓の手術症例にも恵まれました。
順調に1年ほどが経ち7例目の膵頭十二指腸切除術を目論んで臨んだ手術に落とし穴が待っておりました。下部胆管癌で閉塞性黄疸の症例、型の如く経皮経肝胆道ドレナージで減黄したところで手術に臨みました。肝転移、腹膜播種が無いことを確認して、Kocher受動術を始めたところで肝十二指腸間膜の妙な牽引と硬さを感じました。手順を変えて先に胆管の剥離に行ったところ、著しいリンパ節転移が認められ門脈と肝動脈を巻き込んでおりました。